行政書士試験の合格発表が1月下旬にされる。法律系資格の入門とされる行政書士試験だが、合格は決して簡単ではなく、合格まで数年かかるケースも少なくない。そんな難関試験に合格された。
合格された受験生の方、おめでとうございます
さて行政書士試験の合格発表がされると、合否通知書が同時に発送される。この合否通知書には氏名・生年月日・試験地(都道府県)・試験会場・受験番号・合否区分(合格・不合格)が記載されている。
合否通知書は重要
この記載だが、結構重要な意味を持つ。合格された方だと、この情報を元に合格証が発行され送付される。
したがって氏名・生年月日に誤りがある場合は、試験実施団体の行政書士試験研究センターまで、速やかに連絡する必要がある(誤りは少ないと思うが、結婚などのケースは考えられるだろう。なお婚姻等で氏名の変更があった場合は、変更届を提出すれば良い)。
(合否通知書のはがき。合格発表日当日か一両日中に自宅に送付される)
そして合否通知書の右側には、合格判定基準と受験生の方の「得点」が掲載される。順に「配点(合否通知書の裏面に記載)」「合格基準点」「得点」となっている。
この得点だが、法令等「5肢択一式」「多肢選択式」「記述式」、一般知識等、総得点「5肢択一式」「多肢選択式」「記述式」がそれぞれ掲載されている。なお択一式の得点が一定基準まで達していない場合、記述式の採点は行われない。その場合の得点欄は「**」と表記される。
(合否通知書の中身。詳細な得点が掲載されている。)
合格証が届くまでの時間
そしてめでたく合格された方には、2月下旬ごろ行政書士試験研究センターから合格証が届く。これはA5サイズの封筒で、私の合格年度では簡易書留で届いた。したがって不在の場合は配達員の方が持ち帰る。
またこの時期特有の問題であるが、雪が本格的に降る時期でもある。この雪により配達自体が遅れるケースもあるので留意して頂きたい。
(試験を実施する行政書士試験研究センターから届いた合格証の封筒。写真ではよく分からないが、とても薄い。)
ネット上では「ショボい」とか不評みたいです(笑)
封筒を開けると、「合格証の交付について」という紙と「行政書士試験合格証」の紙が入っている。まず「合格証の交付について」は以下のようなことが書いてある。
合格証の交付について
平成××年度の行政書士試験に合格されましたので、行政書士試験事務規程第27条の規定により合格証を交付いたします。
今回行政書士試験に合格された皆様は、行政書士となる資格を有することになりますが、あなたが行政書士になるためには、あなたが行政書士事務所を設けようとする都道府県の行政書士会を経由して日本行政書士連合会に備える行政書士名簿に登録する必要があります。各都道府県行政書士会一覧を同封いたしますのでご利用ください。
(抜粋、文章中一部省略)
(「合格証の交付について」。裏面は全国の行政書士会の所在地一覧になっている。)
そして肝心の行政書士試験合格証。きれいに印刷された書面になっている。合格者の氏名、生年月日、合格を証する旨の文章、総務大臣名、都道府県知事名が記載されている。
(「行政書士試験合格証」。これは厚紙に印刷されている。この他に封筒が簡単に折り曲げられないよう、厚紙が1枚下敷きとして入っている。)
この書面にもあるように、行政書士試験に合格しただけでは行政書士としては活躍できない。各行政書士会に登録(入会)する必要がある。
実務を覚えるなら開業講座の受講がおすすめ
そしてもうひとつ、実務を覚える必要がある。書籍や自治体に用意されている手引書などでも覚えることは可能だが、スタートの段階で大枠を学んでおくことをおすすめしたい。最近では大手資格スクールなどで行政書士実務講座(開業講座)を開講しているところが多い。
スクールにもよりますが、許認可申請とか民事法務など、代表的な業務を学習できます
気を付けるべき点は、新人行政書士を狙った開業セミナーである(いわゆる「ひよこ狩り」とか「ひよこ食い」と呼ばれる)。実務経験や仕事が少ない行政書士がセミナー料を目当てに行うことがあり、メンタルやマインド養成など、行政書士実務と関連が薄い講座も。
この点からも行政書士実務について時間を掛けて分かりやすく講義する「大手資格スクール」の実務講座がおすすめだ。なお受講にあたっては、ご自分の目的やスケジュール・費用等など、比較検討して選ばれると良いだろう。
大手資格スクールによる実務講座(開業講座)の比較
スクール | 内容 | 詳細 |
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伊藤塾↓ | (1)伊藤塾ならではの実務体系論と個別手続きがマスターできる。(2)現役の実務家講師による通信講座。スクーリング(通学)や特定行政書士考査対策まであり、受講料はやや高め。(3)2,000名以上が参加するOB・OG会もあり、ネットワーク(人脈)が作れるかも。公式伊藤塾行政書士講座「実務講座」 | 詳細 |
アガルート↓ | (1)事務所経営、開業などの総論1講座に、メイン業務の9分野の合計10講座から構成(2)科目別購入も可(1テーマは1~2時間程度)(3)すべてオンライン通信講座なので、受講費用は比較的安い(4)視聴期間は約18か月 公式アガルート行政書士講座「実務講座」 | 詳細 |
LEC↓ | 次世代行政書士育成カリキュラム「戦略的行政法務アカデミー」を通学クラス2日間で実施。法令リサーチ、ビジネスモデルの法的分析、デジタル対応と新しいサービス設計の3つを軸に、デジタル化の備えも。公式 LEC「戦略的行政法務アカデミー」 | 詳細 |
伊藤塾行政書士講座、特定行政書士考査対策まで
司法試験や司法書士試験など法律系資格の指導を得意とする伊藤塾の「行政書士実務講座」。開業に必要な知識・能力・スキルのマスターを目標とする。
開業準備・メイン業務のマスター・事務所運営のノウハウをオールインワンで
2022年度の場合、「独立開業準備論」「行政書士法」「実務体系論」「許認可業務論」「事業経営・マーケティング戦略論」など段階的にマスターできる仕組みになっている。
また実践マスターでは、「事務所経営で最も大切な「集客」のための仕組みづくり」の習得を目指す。
まとめると、メイン業務のマスターだけではなく、開業準備や集客方法など事務所運営のノウハウも教えてくれます
【動画解説】「行政書士 実務講座まるわかり説明会~実務講座の卒業生が講座の魅力を熱く語ります!~」
伊藤塾の特長を解説。実務だけではなく、マーケティングもレクチャー。実際の書類作成などアウトプットトレーニングや、スクーリングでは実務家のアドバイスも。この他にも懇親会など各種イベントも随時実施。情報交換のチャンスも。
2023年(第12期)からさらにパワーアップ
第12期からコンテンツが増えた。従来の開業講座に加わった内容は次の通り。
- 特定行政書士考査対策(要件事実・行政法)
- オンライン質問会・懇談会
なお、余談ではあるが、特定行政書士考査対策で学習する「要件事実」は、予備試験の民事訴訟法、法律実務基礎科目<民事>の出題分野でもある。
行政事件訴訟法は民事訴訟法の特則であるように、行政書士試験受験生は予備試験との親和性が高い。将来的に予備試験への挑戦も検討したい。
参考 あの合格率の高い予備校が教える「予備試験に1年で(最短で)合格する勉強法」とは?(アガルート予備試験講座)
行政書士OB・OGの会「秋桜会(コスモス会)」まである
独立開業の士業は孤独。情報交換におすすめ!
伊藤塾の行政書士講座でOB・OGによるコミュニティー「伊藤塾行政書士OB・OGの会 秋桜会」がある。
これは伊藤塾塾生かつ行政書士試験の合格者ならば誰でも参加できるもので、2013年に発足した。交流による情報交換や、士業同士のネットワーク作り、勉強会・会報・講演会などを通してのスキルアップを目的としている。
このようなコミュニティーを通して、情報交換をするのもおすすめだ。「伊藤塾行政書士OB・OGの会 秋桜会」の詳細はこちら
秋桜会とは
2013年に、伊藤塾出身の合格者・実務家のご意見やご要望を受けて、行政書士業界との調和ある発展を共に目指すことを目的に設立された会員制の組織、それが「秋桜会(こすもすかい)」です。伊藤塾出身の合格者であれば、どなたでも入会することができます。
年一回の総会をはじめ、実務や経営などを学ぶ会員限定の勉強会、会員の運営による自主勉強会、会員の更なるスキルアップを図る研究会、会員同士の親睦を深める懇親会や忘年会などのイベントなど、多岐にわたり活動しています。
従来、法律家として縦横のつながりを構築することはなかなか困難なことでしたが、当会では年齢・性別・キャリアに関係なく、共に発展・成長を目指しています。(中略)
勉強会・研究会
実務の習得や開業に必要な知識・能力・スキルなど、実務でご活躍中の講師から直接学ぶ勉強会や、会員の自主的運営で行われる自主勉強会などがあります。また、実務をより深く理解するための国際業務や、遺言相続をテーマにした研究会もあります。交流会・イベント
(以下、省略)
引用「伊藤塾行政書士OB・OGの会 秋桜会とは | 伊藤塾」
アガルート開業・実務講座、好きな分野だけ購入ができる
行政書士試験で高い合格実績を残すアガルート。アガルート行政書士講座の「開業・実務講座」だが、伊藤塾と同じく第一線で活躍する行政書士が講義を担当する。
一番のおすすめポイントは、好きな分野だけ購入できる点だ。つまり、事務所の開き方・営業方法だけとか、相続分野だけ、建設業許可だけ、などご自分のプランに合わせて購入可能。
1テーマは9,680円(価格は2023年1月現在)と、低価格で実務のスタートが切れる。
アガルート・選べる10分野
- 行政書士の資格の活かし方(事務所経営、開業、営業方法を含む)
- 相続手続き関係
- 終活支援関係
- 運送業許可関係
- 風俗営業許可関係
- 建設業許可関係
- 産廃業許可関係
- 入管・国際業務関係
- 法人設立・融資手続き関係
- 補助金手続き関係
なお、全セット購入だと合計金額の25%割引で受講可能。まだ専門分野が決まっていない方や、専門は決まっているものの将来的に業務を拡大したい方におすすめ。
【解説動画】「行政書士 実務・開業講座ガイダンス」
LEC行政書士講座、デジタル化をにらんだ新しい行政法務「戦略的行政法務アカデミー」
LEC行政書士講座の実務講座は一風変わっている。これからのデジタル化時代をにらんだ「戦略的行政法務アカデミー」を開講している。
行政書士といえば、従来の許認可申請など、定型的な業務がイメージされる。しかしこれからはデジタルの時代。申請業務ひとつとっても、変化するはずだ。
そこで「戦略的行政法務アカデミー」では、新しい時代に向けて「法令調査(現状分析)から立法プロセスまで」「ビジネスモデルの法的分析から課題解決のロジック構成まで」「デジタル対応と新たな行政手続きサービスの設計」の3つをメインに講義を進める。
デジタル化が進み、新しい業務が生まれたとする。その根拠法令は何か?また法改正に至るまでのプロセスを見ることで、新しいビジネスチャンスはないか?スタートアップ企業に対し、そのビジネスモデルの法的分析をもとに課題解決を提案するなど、新しい時代に即した行政書士の業務を勉強する。
なお、LECでは合格者向けのコンテンツとして、モチベーションアップに役立つ「実務家インタビュー(無料コンテンツ)」や「実務家講演会(無料コンテンツ)」なども用意している。
TAC行政書士講座
資格の学校・TACによる実務講座。実務講座専用に実務家講師が書き下ろしたオリジナルテキスト。分かりやすさに重点を置く一方、実際の書式を示すなど実務に直結した内容になっている。
2017年度の場合、「建設業許可申請業務」「会社設立業務」「相続・成年後見業務」「産業廃棄物関連業務」「NPO法人設立業務」「入管業務」など、全8回のカリキュラムとなっている。現役の行政書士であり、またTAC行政書士講座で受験指導も行う講師が講義を担当する。通学教室の他、通信講座も用意。資格の学校TACはこちら
独立開業におすすめな書籍
このように大手予備校で基本的な実務を教えてくれる。そしてもう一つ。モチベーションだ。これには行政書士として活躍する方の書籍が役に立つ。そんな書籍をまとめたい。
10年間稼ぎ続ける行政書士の「新」成功ルール
行政書士は試験に合格しても独立開業が難しい士業とされている。その理由として建設業許可などの許認可に関する業務はもうすでに飽和状態になっているからだ。
そんな独立開業が難しい行政書士の世界で10年以上も活躍している人気行政書士がいる。それは埼玉県所沢市の丸山学先生だ。丸山学先生はインターネットの普及に伴い、メールマガジンの発行やブログでの情報発信など新しい形でのアプローチを試みており、それが成功の秘密となっている。
そんな成功の秘密についてまとめているのが、『10年間稼ぎ続ける行政書士の「新」成功ルール』である。もっとも成功の方法は時代の変化と共に変わるし、本書で取り上げれている方法がこの先も通用する保証はない。
したがって読者としては本書から常に新しい業務に挑戦するメンタリティを学ぶべきであろう。そのような姿勢で行政書士の世界に飛び込めば10年どころか、それ以上の活躍も期待できよう。
『10年間稼ぎ続ける行政書士の「新」成功ルール』の主な内容
1章 10年間お客様が並び続けてくれた理由
2章 10年間成功し続けた営業・集客術のすべてを公開!
3章 10年年間錆びないマーケティング術
4章 新人でも、初めての業務でも、依頼人に尊敬されてしまう実務習得術
5章 10年後も依頼され続けるための事務所運営術と危機管理
6章 これからの行政書士成功のルール出典:楽天ブックス
https://books.rakuten.co.jp/rb/6930039/
また最近では民事法務やADRなど新たな分野でも活躍する行政書士の方も多い。しかし従来の中心業務とも言える許認可を中心に取り組みたい方もいらっしゃるだろう。
そんな方には櫻井泰紀氏の『他人より年商10倍「稼げる」行政書士になる方法』がおすすめである。専門分野に集中すれば、許認可だけでも十分に食べていけると期待できる内容だ。
『他人より年商10倍「稼げる」行政書士になる方法』の主な内容
序章 稼げないのにはワケがある
第1章 稼げる行政書士のイメージをつかむ
第2章 お客に媚びない!稼げる行政書士のブランディング営業術
第3章 収入が1ケタ上がる!稼げる行政書士の3つのスキル
第4章 人と金が寄ってくる!稼げる行政書士の人心掌握
第5章 失敗しない!稼げる行政書士の開業術
第6章 すぐマネできる!稼げる行政書士の習慣出典:楽天ブックス
https://books.rakuten.co.jp/rb/6425602/
行政書士の花道
「行政書士の花道」は行政書士の業務について詳しく解説したものだが、物語風になっているのが従来の書籍と異なる点である。
若手の行政書士が主人公であり、一人前の行政書士になるべく孤軍奮闘する姿に共感できるだろう。これを読むことで以前よりも学習に力が入ることは間違いない。
女性の行政書士が書いているのもポイントです
まとめ
ここまで行政書士試験の合格発表から、合否通知書・合格証、実務講座(開業講座)について書いてきた。
合格後に行政書士として独立開業される方も、あるいは開業はしないものの次のステップに向けてスタートを切られる方も言えるが、行政書士試験対策において培った実力と経験は今後の人生においても大きな糧となるだろう。ぜひ次のステップでも頑張って頂きたいと思う。
【コラム】独立開業を目指すなら、行政書士記念日ぐらいは知っていないと(大げさ)
記事の最後にちょっとした情報を。毎年2月22日は「行政書士記念日」。これは行政書士法が制定されたのが1951年(昭和26年)2月22日に由来する。
つまり行政書士法の制定がなければ行政書士という国家資格は誕生しなかったわけであり、この2月22日は頭の片隅でも入れておかれるといいだろう(何かの話題になるかも)。
ちなみに行政書士記念日の2月22日には、行政書士の啓蒙や一般市民の方に行政書士を知ってもらうべく、各都道府県の行政書士会で講演会や無料相談などのイベントを開催している。
合格したら行政書士会!活動まとめ、ADRや特定行政書士も | 試験部
行政書士試験に合格し、独立開業を目指される方もいらっしゃると思います。活動には行政書士会への登録が必要です。また行政書士会の活動とは?等を記事でまとめています。
shikaku-pass.net