2020年11月8日(日)に実施された令和2年度行政書士試験。このご時世で国家資格の受験者数が減っている中、昨年度より受験者数が増えた行政書士試験。
全体の難易度は「標準~やや難しい」という分析、一方で「やや易しい」と評価が分かれている。
どちらにせよ合格を左右するのが記述式だ。しかし、採点基準も示されず、また合格率の調整弁とのうわさもあり、不安に思う受験生の方も多いはず。
そこで大手予備校や有名講師の分析記事をまとめたい。
なお、大手予備校(LEC行政書士講座、アガルート行政書士講座、資格の学校TAC)などでは、「記述式の無料採点サービス」を実施している。ネット上の根拠のない情報よりも、はるかに役に立ちそうだ。
【行政書士試験】2024記述式無料採点サービス、LEC・フォーサイト・TAC・辰巳講評動画・有力講師の採点予想まとめ
合格を左右する記述式 行政書士試験において大きな配点を占める記述式問題。300点満点中の60点という配点なので、出来次第で合否が決まると言っても過言ではない。 平成18年から試験制度が大きく変わった行 ...
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大手予備校や有名講師の分析
フォーサイト行政書士講座
分かりやすいフルカラーテキストでお馴染みのフォーサイト行政書士講座でも、「試験講評(速報版)
この講評から行政法の記述式について「記述式については、例年通り問題44の1問が出題されました。昨年に続いて、今年も行政法の記述式は難しい問題でした。(2020年11月9日時点での評価)」と、難しいとの評価だ。
ならば民法の記述式で挽回したいところ。しかし民法も同じく難しい。
試験講評
(中略)
今年の民法は苦戦された方が多かったと思います。
記述式については、例年通り問題45、問題46の2問が出題されました。
まず、問題45についてですが、第三者の詐欺の出題となっています。こちらは、条文知識で対応が可能な問題ですが、問題の読み方に苦労した方も多いと思います。錯誤の可能性もあると思いますが、問題文の記述から第三者の詐欺を選択したほうが無難かと思います。次に、問題46ですが、(続きは公式サイトで)
引用「行政書士試験の解答速報・試験講評 令和2年度|通信教育のフォーサイト」
▲講評のほか、解答速報の公開も(画像はフォーサイト行政書士講座から)。なお講評ページでは記述式の他、法令科目や一般知識についての解説も掲載されている。
横溝慎一郎先生(LEC行政書士講座)
LEC行政書士講座の重鎮講師である#横溝慎一郎先生
今年の記述の問題を見ていて感じたこと。
解答速報はあくまでもLECさんの公式解答を尊重して話すのですが、いくつか気になった点を書きます。
問題44
出訴期間がすでに過ぎていますので、「換地処分の無効確認訴訟」であることに疑いはありません。
ただ被告なのですが、これは「土地区画整理組合」ではないかと。
ヒントは2010年問題44です。
こちらの問題では、Y組合が施行する土地区画整理事業においてYの換地処分に不服をもったXがYを被告に取消訴訟を行うというくだりがあります。
今回の問題も、施行者は土地区画整理組合です。知事はその設立に認可を与えただけですね。
とすると「被告は本件組合」とするのが正しいのではないかと思うわけです。
問題文でも、換地処分を行ったのが本件組合だと書いています。これをヒントにしろということなのかもしれません。
ちなみに審査請求は土地区画整理法127条の2によると、A県知事になります。
いくつかの予備校では、組合を被告とした模範解答を出しているようです。
ただこの問題文だけから、被告が土地区画整理組合だと判断させるのはかなり無理があります。
問題の作りが荒いんですよね。今年の記述は全般的にそうなんですけど。
横溝
記述について気になったこと(あくまでも個人的な見解です) | 横溝慎一郎行政書士合格ブログ
今年の記述の問題を見ていて感じたこと。解答速報はあくまでもLECさんの公式解答を尊重して話すのですが、いくつか気になった点を書きます。問題44出訴期間がすでに…
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平林勉先生(伊藤塾)
伊藤塾行政書士講座の若き実力派、#平林勉先生
一夜明けて。今年度は…
2020年11月09日NEW !あらためて本試験お疲れさまでした。
昨日に引き続き、本日も本試験問題の解説作成&分析です。今日で作成を終えて、分析に入りたいところです。
今年度の試験は、個人的には異例なことが多いなと思いました。主に、以下の4点です。
(中略)
② 行政法の記述式
行政法は担当していないので、パッと問題を見て解くくらいしかしていないのですが、無効確認訴訟とその対象までは難なくいける。しかし、被告適格がかなり難しい。というか、自分は何の悩みもせずに、A県だと思ってしまいました。難しいとすら思わなかったと。完全なる修行不足です。
よく読むと、確かに組合…となりそう。これは、分析会で詳しく話されるのではないかと思います。平林
一夜明けて。今年度は… | 思考と体系の館~行政書士・司法書士 合格応援ブログ~
あらためて本試験お疲れさまでした。昨日に引き続き、本日も本試験問題の解説作成&分析です。今日で作成を終えて、分析に入りたいところです。今年度の試験は、個人的に…
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野畑淳史先生(LEC行政書士講座)
LEC名古屋地区のエース講師であり、受験生の方に好評な「合格のトリセツ」の著者でもある#野畑淳史先生
【記述】
昨年よりやや易化しました。ただ、問46が条文知識を問う問題ではなかったので、正確に書けた方は多くないかもしれません。(解答のニュアンスが予備校ごとに異なっているという点がそれを物語っています。)
問44
「出訴期間が経過している」「抗告訴訟に限る」とあるので、無効確認訴訟と気づきやすい問題です。被告適格も「A県知事」と書かせようとする意図が見え見えの問題でした。問45
錯誤の論点と考えてしまった方がある程度いたようですが、「嘘の事実を述べた」「騙されたことを知ったCは」とあるので、意図的に第三者の詐欺に誘導するような内容の問題文です。問46
背信的悪意者に関する判例知識を問う問題でした。
予備校ごとで少し解答にばらつきがあるようなので、ここは少し保留とします。野畑
【令和2年(2020年)度行政書士試験講評その4】~多肢選択・記述(追記あり)~ | のばたーの行政書士受験生応援ブログ(アメブロ)
【関連記事】【令和2年(2020年)度行政書士試験講評その0】~ざっと問題を見た感じの感想~【令和2年(2020年)度行政書士試験講評その1】~憲法・基礎法学…
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山田斉明先生(元伊藤塾、現在はリーダーズ研究所)も被告適格は「組合」
https://twitter.com/goukakucoach/status/1325448052761452544
これを受けて、林裕太先生(アガルート行政書士講座、元資格の大原)の投稿。
神橋一彦『行政救済法(第2版)』(信山社)・139頁以下参照 https://t.co/AtEnnPLD3D
— 林裕太 (@yuuta0120) November 8, 2020
神田理生先生(TAC独学道場&TAC行政書士講座)
TAC行政書士独学道場の講義を担当する神田理生先生のコメント。
問題44の解答例についてですが、解答速報第2報で一部修正が入っています。
行政法の無効確認訴訟を題材とした記述式問題ですが、昨日の解答速報の段階では、被告は「A県」としてお話させていただきましたが、こちらは正しくは「土地区画整理組合」(本件組合)を被告とするものと修正させていただいています。
本問において、換地処分をしているのは、A県ではなく、土地区画整理組合でした。本件組合が権利主体となって処分をしているのだから、その処分に対する無効確認訴訟についての被告適格は、本件組合とは別の権利主体であるA県ではなく、土地区画整理組合になるものといえます。
神田
https://ameblo.jp/souvenir77/entry-12636914703.html
ameblo.jp
このほかの実力派講師
LEC横溝先生、LEC野畑先生以外の実力派講師の方の分析は「講師ブログ」が参考なるだろう。
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行政書士講師ブログ | 試験部
行政書士講座の講師のブログの新着記事です。
shikaku-pass.net
TAC行政書士講座の記述式講評
4.法令・記述式 普通
行政法の問題44は標準、民法の問題45は標準、問題46は難問でした。
まず、行政法の問題44ですが、行政事件訴訟法から、訴訟選択・訴訟要件についての問題でした。「誰を被告として」「どのような行為を対象とする」、「どのような訴訟を提起すべきか」ということが問われています。被告は、「A県」か「本件組合」か迷うところですが、本件は土地区画整理組合が設立されており、その組合が行政主体となりますので、本件組合を被告とすることとなります。対象は換地処分、訴訟は、取消訴訟の出訴期間が経過しているので、無効確認訴訟ということになります。被告で多少迷うところではありますが、14点は得点したい問題です。
民法の問題45ですが、これもAが取り消す根拠として、詐欺に基づく意思表示として取消すか、動機の錯誤として取消すか、迷うところではありますが、本文中に「Cに騙された」という記載があることからすれば、第三者詐欺の事案と考えるのが素直といえます。そうすると、取消の要件として、相手方BがAが騙されていることについて「悪意」または「善意有過失」である場合に「取消すことができる」ことになります。逆に、相手方が、善意かつ無過失の場合には「取消すことができない」ということになります。「取消せるのはどのような場合か?」ではなく、「取消すことができるか?」と問われているので、解答の方法としてはどちらでもよいといえるでしょう。なお、「動機の錯誤」の場合、「爆弾が埋められている事実」が「法律行為の基礎とされていることがBに表示されている」と捉えることになると思われます。しかし、この事実を伝えたことは、動機を示したというより、第三者詐欺の事案と考えた上で、伝えなかった場合には、AがBに対して詐欺を行ったという事案にもなり得る可能性が出てくるため、それを打ち消すために、この「爆弾が埋められている事実を伝えた」という一文を入れたと考えられます。したがいまして、本問は第三者詐欺の事案として解答するのが素直だろうと考えます。
民法の問題46は、背信的悪意者の意義を踏まえてCが無権理者でない理由を書く問題でした。ここは書き方がいろいろ考えられる問題ですので、採点もかなり幅を持って採点されるのではないかと推測されます。したがいましてTACが作成した解答例と同じではなくても、配点される可能性が高いといえます。書かなければならない内容としては、AC間の契約が有効であること(無効とはならないこと)は必須です。それを言わないと、Cが無権理者でない理由を書いたことにはならないからです。そのことの裏付けとして、背信的悪意者の背信性は、Bに対して、権利を対抗できないという効果を発生させるだけということを述べることになります。問題文では、「背信的悪意者の意義をふまえて」とされ、「背信的悪意者の意義を述べよ」とはされていない点で、背信的悪意者の意義を述べる問題ではないと考えて、このような解答例としています。
以上からすれば、問題44で12点~20点、問題44は12点~20点、問題45は0点~6点でも仕方ありません。合格者レベルで、少なくとも、24点の得点はしたい問題でした。参考
行政書士試験 解答速報|2024年度(令和6年度)|資格の学校TAC[タック]
2024年度 行政書士試験 解答速報!行政書士試験の解答一覧を掲載。解答速報の他、速報会アーカイブ配信、本試験分析会、データリサーチをご案内しています。
www.tac-school.co.jp
分析動画まとめ
ここからは記述式の分析動画をまとめたい。
アガルート行政書士講座(豊村慶太先生・相賀真理子先生・林裕太先生・田島圭祐先生)
ハイレベルな講師陣が多数在籍するアガルート行政書士講座
辰巳行政書士講座(山田斉明先生、竹内千佳先生)
山田斉明先生、竹内千佳先生(共に元伊藤塾、現在はリーダーズ研究所)による令和2年度記述式の分析動画。
【動画】「2020行政書士本試験 記述式 速報」
【まとめ】受験生の方が今後やるべきこと
ここまで令和元年度行政書士試験の記述式問題の講評について見てきた。確かに40字記述式は60点と言う高い配点で、記述式の得点次第で合格ラインの突破は見えてくる。着実に部分点を重ねていきたい。
しかし今年の本試験に限ったことではないが、「基本的な問題を確実に正解する」ことが大切。特に全体的に難しい年度は、取りこぼしだけは避けたい。
また今後について受験生の方がすべきことは、ただひとつ。大手スクールの無料成績診断を利用して正確なデータ・情報を把握することだ。今年度はTAC行政書士講座・LEC行政書士講座・資格の大原などが実施している。
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【解答速報】2024(令和6年)行政書士試験、講評・無料成績診断・本試験分析会・動画解説まとめ
2024年11月10日(日)に実施された令和6年度行政書士試験の解答速報です。 各試験対策スクールでは解答速報の公開の他、解答速報会ライブ、無料成績診断サービス、講評の公開など、受験された方のフォロー ...
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