2015年11月8日(日)に実施された平成27年度行政書士試験。LECやTAC、大原や伊藤塾など、大手を中心に試験対策スクールで解答速報の公開を行っているが、その解答が割れている。
その割れている問題(割れ問とか没問とか呼ぶ受験生の方もいる)だが、「問題13」と「問題16」である。LEC講師やTAC講師など、講師の方のブログ最新記事が掲載されている行政書士講師ブログを参照して頂くとありがたいが、LECやTAC講師の方のほか、アガルート行政書士講座の林裕太先生などが、この出題に対して疑問を投げかけている。
さて合格ラインへの影響である。没問となり全員が正解扱いになる可能性も予想される。今回の2015年度行政書士試験の特徴だが、択一(マークシート)が昨年より取り組みやすい内容だった(もっとも昨年度は補正があるほど難しすぎた)。
行政書士試験は300満点のうちの6割以上の得点がボーダーライン、つまり合格ラインになっており、極端に言えば、全受験生が180点以上を採れば全員合格になる試験である。
しかしならば、実際の行政書士試験では記述式の採点で調整しているように思われる。例えば合格率が9.05%と出題内容が簡単だった平成21年行政書士試験本試験で言えば、記述式の採点がかなり厳しかった。重要キーワードが書けても点数が少ないケースが多かった。逆に択一が難しい年度では、キーワードが書けているだけで、ある程度の得点が可能だったこともある。これに対して「記述式の採点は合格者数の調整弁」と呼ぶ人がいるくらいだ。
(画像はイメージです。記事とは関係ありません)
さて平成27年度の本試験に戻りたい。もし没問となり受験者全員に得点が上乗せされると、択一の得点ラインが高くなる。すると、択一問題が簡単な平成21年度と状況が似てくる。つまり記述式の採点がより厳しくなることが予想される。
各スクールでは成績診断サービスを実施しているところもあり、一部スクールでは早くも結果を公開している。しかしながら、この没問の影響により、その合格予想も今後変わってくることもあるだろう。したがって正確な合否については、来年1月下旬の合格発表を待つしかない。ボーダーライン付近の受験生の中には不安なり、悶々とした気分の方もいらっしゃるだろう。
そもそも出題者は大学教授などプロのはずなのに、なぜこんなことが起きるのか。法律系の入門資格である行政書士だが、資格のレベルに対して受験生のレベルが高くなっている、との見方もある。確かに近年の行政書士試験には予備試験や司法書士試験と併願して受験されるレベルの高い方もいる。そのような状況で、従来の枠組みで合格者数が出る試験内容にすれば、変化球主体の試験内容になり、今回のように「割れ問」「没問」の可能性がある出題となってしまう。
もちろん出題者の方も注意を払っているだろう。しかしながら一人あたり7,000円もの受験料を徴収している。そして平成27年度行政書士試験の出願者は56,965名であり、その総額は莫大なものになる。ぜひ出題者および試験実施団体には疑義が起きらないような出題をお願いしたい。
【追記】平成27年12月3日、行政書士試験の実施団体である一般財団法人行政書士試験研究センターから、問題16を没問とする措置、および謝罪のコメントが発表されました。
受験者の皆様へ
平成27年度行政書士試験の法令・択一式「問題16」については、妥当なものを一つ選ばせるところ、妥当な選択肢がないことが判明いたしました。
したがって、受験者全員の解答を正解として採点することといたしました。
受験者の皆様にご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。平成27年12月3日
一般財団法人行政書士試験研究センター
理事長 磯 部 力
http://gyosei-shiken.or.jp/